インタビュー

interview

第七回

監督

加藤マニさん

(仮)という別なスポーツ

これはレア・ケースなんですけど、アイドル関係のお仕事をしたとき、歌詞もまだできてないどころかタイトルも決まってませんという仮状態でとりあえず MV 制作してくださいというお話がきたんですが、それはまた普段やる MV とはまったく別のスポーツのような気がして挑戦したんです。制作会社さんが用意してくださったざっくりとしたイメージは古き良きアメリカン・モーテルで可愛らしいワンピース着せてララランドのように踊りましょうだったんですが、その曲はメインの曲ではないカップリング曲だったのである意味冒険ができたんです。冒険というのはセオリーを壊したことなんですけど、一般的なアイドルのMVってどうも「人気メンバーほどたくさん映る」という構図らしいんですね。1位2位3位の A グループの次は4位5位6位の B グ ループ……というような分け方があって、でもそうすると人気ある子とそうでない子の格差が生まれるし、そもそも1位2位3位のグループのカットばっかり使うわけにもいかないから、それってサッカーの予選でいう”死のグループ”みたいでもったいないなと思ったんです(笑)。なのでその順位をシャッフルして1位4位7位を A グループ、みたいにして撮影したんです。昔からのファンからすれば順列のシステムが崩壊するからある種、邪道であるという声が起きてしまうのも事実なんですが、一方で普段あんまり映らないメンバーが上位のメンバーといることでいつも以上に注目されて良かったという声もあり、個人的には後者のポジティブな声が大きかったようにも感じています。厳しい世界ではありますが、わたしできるだけ、すべてをフラットに、平等に映したい気持ちが強いのかもしれません。

培われた視点の先に……


わたしはどういうわけか、学生時代のあだ名が”異端”だったんです(笑)。そう呼ばれようと人と違ったことを意図的にしてたわけではなく、ただ普通に生活してただけでなぜそのように呼ばれたのかいまだにわからないんですが……マジックの練習ばかりやってたからかな?(笑)。当時 放送してた金田一少年の事件簿にハマっていたんですが、あるストーリーで金田一少年がマジックで敵役をやり込めるという話があって、それを見て「うわぁ〜かっこいいなぁ」って わたしの心の中二病をくすぐられたんでしょうね。いま思えばそんなかっこいいものでもないんですが、見ている人を驚かして楽しませるマジックというのは映像制作の原点かもしれません。それまでのセオリーに囚われたり一発のアイデアだけで押し切っちゃったりするよりも、ひとつの映像の中にたくさんの表現を詰め込んで見る人を楽しませたいんだと思います。 ちなみにその当時からバンド活動も並行してたんで、自分のバンドのライブの共演バンドに対してビデオ・カメラ回してライヴ映像を撮ってたんです。そんなことをしていると他のバンドから、ウチのバンドも撮ってくださいって声をかけられるようになっていき、そこから楽器を弾きつつ映像制作もやる人、というような存在になり、今に至っている感じはします。だから多作が強みと自負してますがやってる仕事の9割9分は MV なので……うっかり別ジャンルのお仕事やってみたいですね。低予算映画とか深夜ドラマの監督とかやってみたい気持ちはあるんですが……うっかり頼まれたいんですよ、うっかり(笑)。なんかクラウドファンディング立ち上げて意地でもやりたいんです!みたいなことすると絶対スベりたくないって思いすぎて身動き取れなくなっちゃいそうで、だから……うっかりやってみたいです(笑)。

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