インタビュー

interview

第三回

映画監督

朝原雄三さん

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プロフィール
映画監督/ 松竹株式会社
朝原雄三 (あさはらゆうぞう)
京都大学文学部を卒業後、1987 年に助監督として松竹に入社。
山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズや「学校」シリーズなどに携わる。
国民的な人気を誇った「釣りバカ日誌」シリーズでは第14弾「お遍路大パニック!」(03)から監督を務め、続く第15弾「ハマちゃんに明日はない!?」で04年度芸術選奨文部科学大臣新人賞(映画部門)を受賞。
シリーズ最後の作品となった「釣りバカ日誌20 ファイナル」(09)までの7作品でメガホンをとった。近年の作品では、映画「武士の献立」(13)、「愛を積むひと」(15)ドラマ「釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助」昨年のテレビシリーズで監督を務めています。

スタジオ/Planear上板橋スタジオ

ロケーション選びでこだわるポイント

もちろん物語の内容にそってロケーションを探すことが大事ではあります。僕の場合は台本を書く場合も多いですが、ロケ現場を見てから内容やシチュエーションを大幅に変えることも非常に多くあります。

使いたいと思える、「いいな」と思えるロケーションは、部屋の造りでも、街の中の路地やビルでも、背景として見ても奥行きがあるドラマ性が感じられるところですね。

予算的にその都度求めるセットを建てるのは難しくなった以上、めぐりあったロケーションをどのように使うか、どんなエピソードにできるかに想像力を費やすことが大事になってきています。

ロケハンをするときは、どんな話を、どういう風に作れるのかを常に考える必要があり、制作部にはその想像力が求められます。撮る側としても、用意された撮 影場所に不満ばかりを言っていては何も進まないのが今の映画やテレビ作り。ロケハンがシナリオを作り、撮影自体に発展していくものとさえいえるので、重要度がかなり高いものです。

物語に合うことは大事だけど、「このロケーションならさらにこういう話も作れる」というハプニング性というか、撮影に広がりを与えられるロケーションだとうれしいものですね。

制作部も大事なクリエイター

一緒に作品を作っていく上で、制作部も作品を愛してくれているというのが最も重要だと思います。幸いにして、これまで同じようなメンバーで仕事が進められているので、制作部に対してロケーション選びの細かい指示は特にありません。制作部は、僕との話の中でいかに想像力を膨らませられるかが勝負。

「さらにこういうこともできるのでは?」という提案もあればさらに撮影は質の高いものになっていくでしょう。シナリオライターのイメージの限界を突き破ることになるかもしれないし、間違いなく作品に奥行きが増します。

現場のキーを握るのは、演出部を超えて制作部になってきている現状があります。予算などの問題もあって、演出部出身の僕としては少し寂しくもありますが、制作部が作品の内容や質に大きく影響を与える存在です。

そのぶん仕事量も多く、ロケハンだけでなくセット作りなど、本来は美術部やデザイナーがやっていたことの6~7割の作業まで制作部がやらなければいけないのが現状。大変だと思いますが、ビジネスとしてだけでなく、クリエイターとして一緒に撮影に関わってくれたらうれしいですね。撮影場所を探すだけの“不動産屋の物件紹介”では続けられない仕事でしょう。作品作りが好きな人間だけが残っていく業界ですから。

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